SEL FISH
あーあ、結局どっちがって聞いてない。
唇を尖らせた。焼きそばの看板を持った濱さんも近くにいて、後ろを気にしていた。
「ナンパとかされたことないよ。前にいた人、格好良かったね」
そーう? と濱さんの言葉に苦笑いする藤沢さん。あたしはもう興味が逸れて、ピンクのマニキュアが少し剥げているのが気になった。
「じゃあ、私達が連絡先教えてきてあげよっか?」
「ほ、本当に?」
「いーよ。早くメモして」
……私達?
濱さんのメモを握った藤沢さんに、再度引っ張られる。この人、お人好しが過ぎるんじゃないの。