SEL FISH

午後になっても人の数は変わらない。
体育館で軽音楽部がライブをするみたいで、廊下を宣伝して回っている。

「それはまた何があるか分からない二人で」

戯けたように話すアキに、あたしは何を話せば良いのか分からなかった。

「祈璃?」

「あたし、嫌われても大丈夫な風に見える?」

聞き方が思っていたより幼稚になった。アキは心配そうな顔から、きょとんとした表情に変わる。

「藤沢さんにそう言われちゃったー」

まあ、確かに平気ではあるけれど。
それはただ、あたしがあたしを好きじゃない人を視界にいれないだけで。

嫌われても良い、とイコールにはならないんだけどなあ。


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