SEL FISH
尻ポケットから財布を出して、一万円札を二枚取り出す。
「その時の、奢るっつって何もしてなかった分。あいつらも誘ってなんか食って」
「こんなに良いのかよ!? つか今から行こうぜ」
「悪い、今は……」
言葉が続かない。
名倉が怪訝な顔をする。
俺は変わったらしい。
髪色が? 雰囲気? それとも周りにいる奴?
ただ違う殻から違う殻に住処を移しただけなのに。
「アキ、呼ばれてる」
後ろから委員長が来ていた。いつからそこに居たのかは分からないけれど、助かった。
「じゃあな。あいつらによろしく」
手を少しだけ挙げる。