SEL FISH

その男の視線があたしに移った。

「は? 彼女が身分偽ってるのに、オトモダチは何も思わねえのか」

か、彼女?
藤沢さん、こんなバカそうな男を彼氏に?

「それは、救われない……」

ぴく、と藤沢さんが肩を揺らした。

「どうした?」

いつ入ってきたのか、アキがいた。藤沢さんとあたしと目前の男に視線が行ったり来たり。

「なんかあるなら、サツ呼びますけど」

すっとあたしたちの前に入ってきた。

サツ……? あ、警察のこと。

連れの男が顔を強張らせて、藤沢さんの彼氏の背中を押す。
もう一人が「すみません」と会釈のような礼をして教室を出ていった。


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