SEL FISH

藤沢さんはこちらを見なかった。同じタイミングで同じことを思うのは、少し驚く。

更衣室の外は日が落ちて薄暗くなってきた。

「なんで嘘吐いてたの?」

各々に事情があるということは理解している。あたしがこの事を聞く権利があってないようなことも。

「嘘吐いちゃ、だめ?」

藤沢さんはロッカーと話しているみたいに、前を見ていた。

昼間の怒鳴り声から察するに、高校名と歳は嘘を教えていたんだろう。身分のはっきりしていない歳のあたし達はそういうところに重きを置くし、それにあの人にとってかなり重要な点だったみたいだし。



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