SEL FISH
大きいBGMで彼が呼び止めたのは聞こえなかったらしく、ベンチに座ったまま伸びをしている。
勝手なお世話だけれど、見てなくてよかった、と思った。
「うん、そうする」
そう言って早足で行ってしまう。
どきり、とした。
泣くかと思ったから。
ゲーセンで遊んで外に出るとまだ明るかった。駅の方のドラッグストアに用があるといういのりちゃんと別れて、彼と二人で帰り道を歩いていた。
「いのりちゃんに付いて行かなくて良いの?」
「まだ明るいし、付いてくるなオーラが出てた」
確かに女の子は付いて来られたくない場所は沢山ある。