SEL FISH

彼と歩いていると、あの夜のことを思い出す。

「アネゴは予備校に行くんだ?」

「え、ああ、うん。行きたい大学に頭足りてないから」

「俺も勉強しないと」

彼だっていのりちゃん程ではないけれど、頭が良い。

今の私にとってその言葉は複雑だった。

「そんなことより……いのりちゃんに言わないの?」

「何を?」

「あの公園の人たちのこととか、告白とか」

何故私がこんなことまで言っているのだろう。
彼がきょとんとした目でこちらを見る。

この人は確かに根暗っぽいしゲーム好きだけれど温厚だし頭も良い。



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