SEL FISH

高校ではプールがないので、塩素の香りが懐かしい。

「いのりちゃんのこと、嫌いなの?」

「嫌いだったら一緒にファミレス行ったりしないでしょ、堂本さんとも」

「アキくんはさあ!」

はぐらかす答えに、つい大きな声を出してしまった。すれ違った小学生がこちらを振り向いて「痴話喧嘩だ」とこそこそ話している。

痴話喧嘩じゃないけれど。

驚いて固まった彼は、足も止まった。
私は彼の方に体を向ける。

「誰かに自分を見せるの、ちゃんとした方が良いよ! このまま表面だけ付き合ってたら、いのりちゃんだって愛想尽かせちゃうかもしれないよ!」



< 235 / 328 >

この作品をシェア

pagetop