SEL FISH
文化祭実行委員をやっていた彼は、忙しさにげっそりとしていたけれど、誰にも弱音を吐かなかった。
いのりちゃんはそれに気付きながら、気付いていないふりをしていた。
これは私だから分かる。弱い部分は誰かに見せないと駄目だ。人間は弱い部分を持ち合わせて初めて完全になる。
私はいのりちゃんに見せることが出来た。きっと藤沢さんも同じだ。
「アネゴが、初めて名前で呼んだ……」
「そこじゃないんだけれど!?」
「アドバイスありがと」
さらりと受け取られる。
「少しだけ、目醒めた」
高校最後の、夏休みが始まる。
end.
20150912