SEL FISH
結局、誰も金魚を掬うことは出来ずに移動した。
「アキくん、ここらへんに住んでるの?」
「うん。駅からも近いよ」
「じゃあ釜石くんとかと近いんだ」
釜石とはクラスメート男子の名前。確かに、たまに朝同じ電車で見かけることがある。
よく知ってる、と藤沢さんに少し感心してしまう。
隣を歩く藤沢さんばかり見ていると、反対の隣にいる祈璃の姿を見失った。
振り向けば、斜め後ろを歩いている。
流石にナンパに捕まることはないだろうけどはぐれたら勝手にどこかへ行ってしまいそうで怖い。
「祈璃、リンゴ飴食べる?」