SEL FISH
こちらを見る顔が輝く。エサを貰える子犬のようだ。
「うん!」
「なら多分あっちの方に……」
「あ、やっぱり綿あめが良い!」
近くを通った幼い子の綿あめを見て、ころりと意見を変える。
そんなのは慣れてる。
「はいはい」
それから、祈璃の歩く速さまで遅めると、浴衣を着てるから一歩が小さいことに気付く。
俺と藤沢さんは私服。こんなのナツに言ったら、気遣えないなって舌打ちされそう。
あと少し疑問に思っていたことは、祈璃と藤沢さんの会話が少ない気がしてならない。
不穏な空気は出していないけれど……兎に角、俺を真ん中にして並ばないでもらいたい……。