SEL FISH
了承を得ずに苺牛乳に伸ばされる手。
その前に、アキの声がした。
「祈璃、はやく」
もう会計のところにいた姿を見て、反射的にそちらへ歩いた。
後ろを向くのが少し怖くて、いつもよりアキに近付く。それを知ってか知らずか、アキが振り向いた。
「ナンパ?」
「ぶつかって謝ったら苺牛乳買ってくれるって言ってきて…」
「やり口が誘拐犯と一緒じゃん」
「あたしもそれ思った!」
同調すると、アキが笑う。そういえばお金払ってない、と思ってアキのポケットに小銭を突っ込む。
ちょっと驚いたアキは事態を把握して、袋の中から苺牛乳をくれた。