SEL FISH
視線が足元をうろついた。
いつもなら、ちゃんと目を見て言えるはずだった。
「藤沢さんの隣ばっか歩くし」
「途中でちゃんと気付いたって」
「藤沢さんとどっか行っちゃうし」
「それは反省してます」
「藤沢さん、あたしの友達なのに」
「……ああ、はい」
道の真ん中で止まっているのが邪魔だったらしく、アキが手を引いてくれた。
「アキ、取られたらやだ」
左目から涙が一粒だけ零れた。
振り向いてあたしの顔を見たアキがぎょっとした顔をする。
道の端に寄って、後ろポケットを叩いたりしている。
「……ビスケット?」
「ハンカチ!」
end.
20150925