SEL FISH

すぐに大粒の雨が降ってきた。

周りの人たちが走って神社の林や出口の方へ走っていく。

あたしたちもここに突っ立っていたら濡れ鼠になってしまう。

動かないアキを見上げると、手首を掴まれた。
何かと見ていると、顔が近づいてくるので引いてしまう。

それを許さないみたいに引き寄せられて、唇が重なった。

あ、大丈夫だ。

「それは、俺が今から祈璃を家に誘っても良いってこと?」

雨にかき消されない声。
その意味を知っていて、あたしは頷いた。





アキの家は本当に近くで、そんなに濡れずに済んだ。



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