SEL FISH
偉大なる姉
玄関の鍵が回される音で目が覚めた。
隣で祈璃がすやすやと眠っている。起き上がってTシャツを被る。
ナツが何かを言う前に階段を下りた。
「ただいまー」
「おかえり」
ソファーに座って背中に声を受ける。
「え、いのりんは?」
ナツが帰るといつも部屋から顔を出す祈璃がいない。玄関の靴を……下駄を見て、祈璃がいると判断しているんだと思う。
「寝てる」
え、と声が聞こえた後に荷物が置かれて、足音がこちらに近付く。
ぐいっと肩を引っ張られて無理矢理顔を見られた。
呆れた顔のナツ。最近忙しいらしく、姿を見るのは久しぶりな気がする。