SEL FISH

アキが塵取りを持って、廊下に戻ってくる。

「どうだろ、周りの方が現実をちゃんと見てることってあるから」

堂本さんが苦笑いした。

夏の間、堂本さんとは一度も会わなかった。

少し会わない内に大人みたいなことを言う人になったなあ、なんて感じる。

「堂本さん、歳取った?」

「誕生日まだなんだけど!?」

「そういえばね、アキと付き合うことになったよ」

堂本さんの顔が、驚いてからゆっくりと明るくなる。

それから、抱き着いてきたのであたしの方が驚いた。ぎゅーっと力が入って肩と腕の繋がっている所がみしりと悲鳴を上げて、あたしも呻き声をあげてしまった。


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