SEL FISH

人物は見えない。この学校の誰かのお迎えにでも来たのだろうか。

藤沢さんの新しい彼氏とか……?

「ごめん」

アキが溜息と共に言葉を吐いた。見上げれば、遣る瀬の無い顔をしている。

「今日ファミレス行けなくなった」

「うん?」

「堂本さんと行って。二人とも気を付けて帰ってね」

前髪をさらりと撫でられた。
あたしの返事を聞かないまま、アキがそのバイクへと近付いていく。

「仕方ないね、行こっか」

妙に諦めが早い堂本さん。じっとその顔を見つめてから、アキの後ろ姿へ視線を向けた。



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