SEL FISH

すごく後ろから膝の裏を蹴ってやりたい気分だったけれど。

「私、中学のとき不登校児だった」

信号が赤になる。ガードレールに座ったアキくんが私の方を見上げた。

「こじれた私はいのりちゃんを犠牲にした。それでも、いのりちゃんはそのことを私に謝っちゃ駄目だって言った」

朝焼けは美しくて一瞬だった。
夜はどうだろう。

「今の自分が好きなら、今までの自分がやったことを簡単に謝っちゃ駄目って」

「……祈璃らしい」

「きっと、アキくんはそのことにずっと気付いてたんだなって思った」

人の良い所は、嫌な所の中にあると思う。


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