SEL FISH

「……ってことなんだけど、一緒に行きません?」

日直なのか黒板を消していた堂本さんは険しい顔をした。

「行きません」

「今日予備校?」

「気を遣ってるの。恋人のお見舞いに水差すわけないでしょう」

言いたいことは分かる。

「祈璃ちゃんが休んで藤沢さんが掃除代わってくれて私が遠慮してるんだから、話すことはちゃんと話したら?」

そういうことだ。

祈璃の家のマンションのチャイムを押す。働かないと死ぬらしいマグロの母親は休んでるのかな、と思いながら返事を待った。

流石に中に通してもらえるとは思えないので、様態を聞いて夜に電話でも。

「はーい」

……男の声?



< 312 / 328 >

この作品をシェア

pagetop