SEL FISH
今日はよろしくされる日なのか。
止める間もなく、その人は財布とエコバッグと車の鍵を持って出ていく。
結局、誰だったんだろうか。
更にぐったりとさせてしまった祈璃の手を握って床に座った。
少し眠って、目を覚ます。俺がいるのを見て、こちらに身体を向ける。
「祈璃の父さんも仕事?」
遠回りに尋ねると、小さく首を振る。
「パパはね、あたしが幼稚園のときに病気で死んじゃった」
じゃああの男は誰なんだ、という疑問より、こんなときにヘビーな話題を引き抜いてしまったという後悔の方が大きかった。