SEL FISH
俺は近しい家族はみんな健在だ。
「ごめん」
「別に謝らなくても良いよ。あれでしょ、ジャンのことでしょ?」
ジャンってフランス人なのか。
祈璃が少し笑う。
「お母さんの恋人。あたしのこと気遣ってるのかな、もうここに住んで数年になるんだけどまだ再婚しようとしないの」
結婚したことはないけれど、その気遣いはよくわかる気がした。
もしも結婚して子供が出来たら、祈璃は家族で一人になってしまう。結婚しなくてもそうだけど。
「どっちも普段あんまり家に居ないんだけどね……」
少し天井を見て祈璃が言った。