SEL FISH
え、とアキの顔に緊張が走る。
「指輪とか持ってった方が良いかな……」
「ママにプロポーズするつもり?」
「いや、娘さんをください、みたいな」
真面目な顔をして言う。あたしは肩を震わして笑ってしまった。
「何それ、すごくうれしい」
「……そりゃ良かった」
「じゃあ、またね」
「うん」
アキは校内に、あたしは外に歩く。
校門近くではママとジャンがこちらを見ていた。ママの手にはカメラ。
入学式、殆どの生徒の親が来ていたけれど、ママは来なかった。
友達に「残念だね」と言われたのは覚えている。