SEL FISH

心臓が飛びでるかと思うくらい驚いて、恐る恐る振り向く。

「……アキ? そんな怒らなくても、」

「俺じゃない」

アキも革靴を持ったまま固まっていた。
アキじゃないのなら…?

「自分からハブった尻軽女と馴れ合っちゃって」

靴箱の裏で女子の声がする。

「別に、馴れ合ってなんかないけど」

この声とこの口調は、堂本さんだ。
あたしもアキも微動だにしない。

二人揃って盗み聞きする気満々。

「なに強がってんの? やっぱ堂本さんおもしろーい」

「ちょっと、笑っちゃダメでしょ」

クスクスと笑う音がする。堂本さんと対峙しているのは数人の女子らしい。


< 42 / 328 >

この作品をシェア

pagetop