SEL FISH
心臓が飛びでるかと思うくらい驚いて、恐る恐る振り向く。
「……アキ? そんな怒らなくても、」
「俺じゃない」
アキも革靴を持ったまま固まっていた。
アキじゃないのなら…?
「自分からハブった尻軽女と馴れ合っちゃって」
靴箱の裏で女子の声がする。
「別に、馴れ合ってなんかないけど」
この声とこの口調は、堂本さんだ。
あたしもアキも微動だにしない。
二人揃って盗み聞きする気満々。
「なに強がってんの? やっぱ堂本さんおもしろーい」
「ちょっと、笑っちゃダメでしょ」
クスクスと笑う音がする。堂本さんと対峙しているのは数人の女子らしい。