SEL FISH
どこかから、ふわりと入浴剤の香りがした。
家の換気扇が回る音。
「んー……俺は堂本さんも好きだけど」
「もって、オマケ感があるんだけど」
「イノリズムのひとは嫌いじゃないから。だから、今の堂本さんは好きだね」
「イノリズムってなに? しかもあたしのこと聞いてるんじゃないんだけど?」
全く前に進まない会話。お母さんがキッチンにいたら聞こえているかもしれない。
はぐらかしているということは、答えたくなかったのか。
それなら無理に聞こうとは思っていない。柵に手をかけると、彼が言った。