SEL FISH
「祈璃といると、強くなれる気がする」
こちらを見ていなかった。いつもの少し暗めの視線。
「俺はイノリズム信者なだけだから。本当に強いわけじゃないんだけどさ」
「……なんか厨ニっぽい発言」
「本とゲームで育ったからね」
じゃあ、と手を開いて、来た道を帰っていく。
結果、送ってくれるカタチとなってしまった。
角を曲がるまで背中を見送って、家の扉を開けた。
「おかえりー、どこで寄り道してたのよー」
リビングの方からお母さんの声がする。
「ただいまー、ごめん」
スニーカーを脱いで、リビングの方へ歩く。
今更になって、違和感の正体に気付いた。