糸
「ねぇ、のぞ。
あのさ、私と晴人を2人きりにしてくれない……?」
紗良はそう言って顔を赤く染める。
少しだけ苦しいと思うのは幼馴染だからだろうか。
「わかったよ
涼太〜!私も帰る!
んじゃ、またね!」
2人に手を振り涼太の元に走る。
このパターンは何度目だろうか。
「紗良にお願いされたの?」
なんて聞いてくる限りそろそろ涼太も気づいているのであろう。
「まぁね。
ていうか、受験終わったのに勉強するの〜?疲れない?」
勉強に対しての不満をもらす。
現実を見たくなかったから。
紗良のことを考えたくなかったから。
「いや、俺医者になりたいからさ。」
「えっ、そうだったんだ。
私は何になろう。」
みんな将来のこととか考えてるんだなぁ……
「何にでもなれるよ。
きっとのぞならなんでもできるよ。」
なんて言い聞かせるように言う涼太が少しおかしくて笑った。