星空の奇跡【短編】
「では、リハーサルを始めます」



本番のホールでのリハーサル。


楽器の音を合わせるチューニングをしてから、1曲……1曲と曲が進んでいく。



「では、最後にバイオリン・コンチェルト」



いよいよ……最大の不安。



バイオリン・コンチェルト……。



ゲストであるバイオリンのソロ奏者が、ステージに出て来た。



私の横を通って、ステージ中央にいく。


その時ふわっと柔らかな甘い匂いがした。



私の胸も、何故かトクンと弾む。




なに……この人。


見た目は、まさに王子様……。


爽やかな笑顔で高そうなバイオリンを持って……。



「では、曲の頭から……」



いよいよ、不安要素が満載の、曲のリハーサルが始まる。



曲の始めは、バイオリンのソロはまだない。



その時、バイオリンの彼が近付いて来る。



弦でも切れたから、舞台裏に行くのかな……なんて思っていると、私の横で立ち止まった。



「ソロの所は、僕を信じて、ついて来て。僕だけを……考えて……」


耳元で囁かれた、甘く低い声に、背中がゾクッとして 頭の奥が痺れる……。



「は、はい……」



よろしく、と微笑まれると、心臓がまた激しく動く。




< 8 / 21 >

この作品をシェア

pagetop