S×S
episode1
「姫様ー!朝でごさいますよー!」
朝からばぁやが大声で叫ぶ。
「まってばぁや…。あと5分…」
眠い…。まだ寝たい…。
私は睡魔に負け、また布団の中に潜り込む。
すると、そばからコツコツと足音がした。
誰か分かった私は、布団をぎゅっと掴む。
いやだ…!まだ寝るんだから…!
しかし、そんな思いはむなしく消え去り。
布団をちらっととられ、その人は耳元に顔を近づけてきた。
え、なに…?
「おはよう、姫。早く起きないと、キスしちゃうよ?」
その一言で、私はガバッと起きる。
「それだけは勘弁して!」
「あ、起きた」
や、やられた…!
ベッドに腰掛けながらフッと笑っているのは、私の執事、星夜。
ん?なんで執事がいるかって?
実は、うちはメディア面でも社会面でも有名な資産家。
私、一ノ宮姫は、そんな家の長女で一番上。
おまけに両親は仕事で家にいないことが多い…。
で、年頃の女の子を家で野放しにしたくないという両親の思いにより、
5歳の頃からばぁやが、中1の頃から私の専属執事、冬宮星夜ともう1人が付いている。「姉様ー!おはようございます!」
「姉様!」
朝から元気に挨拶してくるのは、妹で中3の妃と、弟で小4の皇貴。
「おはよう!朝から元気ね!」
「姉様を見たら、眠気なんて吹き飛んじゃいます!」
「そうです!」
か、かわいい…!
そう思っていると、後ろから誰か気配がした。
「姫、おはよう」
「あ、おはよう!涼星!」
声の主は、もう1人の私の専属執事、春宮涼星。
背が高く、安心感のある笑顔で微笑んでくる涼星は、私のお兄さんみたいな存在。
一方星夜は、美形な顔をしていながらいたずら好き。でも、面倒見はいい。
どっちにしろ2人とばぁやは、私達と家族のような存在。
「あのさ、姫」
「どうしたの?星夜」
「…今日の朝、何か頼まれてなかった?」
「…あ」
そうだった…!今日の朝学校に外国の訪問者がくるから、早めに来なさいって先生が…!
「ど、どうしよう!」
「はぁ…。車に乗って。涼星」
「分かった。用意してくる」
2人はテキパキと用意をする。
「私も制服に着替えなきゃ」
急いで階段を上り、自分の部屋でササッと着て、身仕度を済ませる。
すると不意にドアがノックされた。
「どうぞー。あ、星夜」
「姫、用意出来たよ…って。お前、メイクしないの?」
「しないよ!そもそもできないし」
そう。私は生まれてこのかた自分でメイクをしたことがない。
「ま、いいか。お前らしいし」
「そう?」
笑いながら星夜の方を向くと、星夜は顔を真っ赤にした。
「どうしたの?」
「うっせ」
変なのー。
私は外に行き、妃と皇貴に手を振りながら車に乗った。
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