召喚女子高生・ユヅキ
いつもの怒りもわかず茫然としていると、東雲は渋い顔になった。
「そんな顔するだろうから、言いたくなかったんだ」
やっぱり、気を遣われていた。
ますます自分が情けなくなる。
「ごめん……」
「三度目だな」
それでも、すぐに気持ちは切り替えられない。
手の中にいる白夜に指を舐められても、今度はすぐに浮上できなかった。
東雲は長い溜め息をつく。
「桜は好きか?」
「は?」
「桜の花は好きかと訊いている」
「そりゃ、日本人で嫌いな人はいないと思うけど……」
口にしたあとで、ここの住人に通じる概念なのかと気付く。
どう説明するか迷う内に、東雲は立ち上がった。
「こっちに来い」
局を出て、廂を横切る。
いつもなら「また命令? 一体、何様よ?」とでも悪態つくところだが、先ほどのこともあり、強気に出れなかった。
言われるまま、白夜を抱いたまま後をついていく。