召喚女子高生・ユヅキ
日下部は、攻め手を間違えた。
一般市民としての義務を果たすと口にしているが、柚月にわかりやすい脅しをかけてきたのだ。
暗に「正直に話した方が身のため」だと告げている。
そんな脅迫に屈する彼女では、もちろんない。
彼のしていることは、正論そうに見えて他者の弱みにつけこもうとしているだけだ。
従う理由なんて、どこにもない。
「……だから? あんた、私をどうしたいわけ?」
彼女の口調は、あくまで冷ややかだった。
「あんたが言いたいことはわかるわよ。カツアゲの現場を目撃した時点で、私のすることは仲裁じゃなくて警察への通報でしょうね。けど、仮にそうしたとして、その後はどうなるの?」
日下部の目が、わずかに見開く。
柚月が冷静に反論したことに驚いたようだった。
「通報したとしても、あの連中は警察が到着する前にきっとドロンよ。もちろん、彼らの身元はわからず、お金は戻ってこない。その時、被害者の少年に何て言うの?
『ごめんね。お金のことは諦めてちょうだい。でも、夕暮れ時に大金持ってウロウロしてたあなたも悪いのよ』とでも言うつもり?
ふざけんじゃないわよ。これからを生きてく純真な子供に、努力すれば報われる喜びの前に、他人を疑うことを教えてどうすんの?」