召喚女子高生・ユヅキ




 選ばれた意味。

 そういえば、東雲は何故、自分を召喚したのだろう。

 理由など考えたこともなかった。
 大方、扱いやすい人間を適当に呼び出したと思い込んでいたのだ。

「それから、柚も」

 名前を呼ばれて顔をあげる。
 正面にある大粒の瞳が、柚月をしっかりと捉えていた。


「わかりにくいかもしれないけど、男の人の優しさって目に見えるものばかりじゃないのよ」

 目に見えない優しさ。

 表現が抽象的すぎて、柚月には理解できなかった。

 意味を尋ねようとすれば、隣にの莉子がいきなり立ち上がった。



「あたしは見える方がいいッ!」

 胸の前で拳を握り、親友が叫ぶ。
 店内の人間が注目したが、発言自体には激しく同感だ。


 やっぱり、優しさは目に見えるものだろう。



「デートとかご飯とか靴とかバッグとか!」

 続けられた具体例には、栞と一緒に溜め息をついておいた。








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