召喚女子高生・ユヅキ
さらりと零す柚月に、悪気はなかった。
彼らのような不良は、似たり寄ったりな外見で見分けがつかないのだ。
実際に、怪我の痕跡である包帯やガーゼがなかったら気付かなかったに違いない。
「あっはははッ!
面白い娘もいるもんだね!」
盛大な笑い声に、今までの緊迫した空気が破られる。
「しかも、こいつらに勝っちゃった? すごいね。何か、武道でもやってるのかな?」
声の主は、柚月たちとそう変わらない男子だった。
小柄だが、手足が長くて細い。
長年スポーツをしているとわかる体格。
笑うと口元から、牙のような八重歯が零れる。
他の仲間と比べると、わりと見られた顔だった。
もちろん、東雲や宗真の足元にも及ばないけれど。
「誰よ、あんた?」
「これは失礼。
俺の名前は、大神 那智(おおがみ なち)。これでも、【牙狼党(がろうとう)】ってチームのリーダーでね。以後、お見知りおきを」
挨拶のつもりなのか、帽子をとり、恭しく礼をする。
柚月は、舌打ちしそうになった。
大神の言葉は、面倒な事態を暗示している。