召喚女子高生・ユヅキ
少し寂しいけど、そろそろ本気で幼馴染み離れをしないと。
冗談混じりにそんなことを考えれば、春日が困ったように笑う。
「おまけにその娘、大物っぽいんだ。直球で攻めても、惚気を聞かされてるって勘違いしてて」
「へえぇぇ。ますます興味深いわ」
柚月が感嘆の声を洩らす。
それは、とんでもない大物だ。
春日のストレートなアタックも通じないとは。
さらに詳しく話を訊こうと身を乗り出した瞬間、耳鳴りがする。
《霊圧探知 対象【蒼龍】》
(なぬッ!?)
聞き覚えのある声に、スプーンを持つ手が止まる。
《対象捕捉 空間転移 発動》
カッ!
真っ白に閉ざされる視界。
とっさに、金魚鉢の器を抱えてスプーンを握る。
ドタッ!
「はぅッ!!」
背中から鈍い衝撃が走る。
一瞬だけ息を詰まらせ、痛みをごまかすためにゴロゴロとのたうち回る。
「ようこそ。次元の狭間を渡る【彷徨者】よ……って、なんだ。その愉快な動きは」
頭上を見ると、呆れたような表情の東雲と目が合った。