召喚女子高生・ユヅキ
「…………ぷっ」
口元を押さえ、肩を震わせている。続けて、声にならない息づかいが聞こえてきた。
もしかして、笑ってる?
「小さな子供みたいだな。ついているぞ」
指先で顎をつつく、東雲の表情は笑顔だった。
それも、とびきり爽やかだった。彼はよく笑うが、人を小馬鹿にするような意地の悪い嘲る種類が多い。こんな風に純粋に楽しそうな表情を見るのは初めてだ。
柚月は戸惑って、はたと気付く。
「えッ、どこ?」
きょろきょろと鏡を探す。
ヤツに笑われているのは、自分なのだ。口元にクリームか何かがついたに違いない。
見かねたらしい東雲が立ち上がって、目の前まで歩み寄る。
「違う。こっちだ」
いつもとは違う優しげな表情で、指を唇に触れてきた。あまりにも躊躇わずに触れてきたので、柚月は驚きも抵抗も忘れてしまう。
さっと拭って見せてきた指には、チョコレートソースがついていた。柚月が何を思うより先に、意外な指示を出される。
「とってくれ」
「私が?」
まるで近くにある品物を取れと言うような口調だった。頼まれた方は目を丸くするしかない。
「すぐすむだろ? 僕が舐めて落としたら、君は嫌がるだろうし」
そう言って指を舐めとる仕草に、柚月はどきっとする。