召喚女子高生・ユヅキ
指摘通り、そのまま東雲に指を舐められるのは抵抗があった。不快というより、されたら困る。なんとなく、気まずい雰囲気になりそうだ。
なのに、東雲は当たり前のように指を近付けてくる。
柚月は自らの食い意地を嘆いた。何故、召喚される時にパフェを掴んでしまったのか。
ハンカチもポケットティッシュもスクールバックの中だ。
仕方ない。
これ以上、迷っていると変に思われる。
柚月は、おもむろに東雲の手をとった。
チョコレートのついた指先に口をつける。
その瞬間、
(ん?)
カッと頬が熱くなり、心臓は激しく飛び跳ねた。
今さらになって、自分のしていることがとても恥ずかしく思えてきたのだ。そこで、すぐに止めてしまえばよかったものを。
どうしようもない自尊心が先立つ。
急に止めれば、東雲が何を言ってくるかわかったものではない。当たり障りなくスマートに終わらせてしまえ。
そう狂気じみた本能が告げてくる。
わずかに身動ぎする東雲の手首を掴み、舌を這わせて舐めとる。最後に軽く指に吸いつき、ゆっくりと唇を離した。
時間としては数秒だったろう。けれど、柚月にはとても長く感じられた。
いまだに心臓がどくどくと脈打つ。
「…………大胆だな」
珍しく、しげしげといった表情で東雲が指先と交互に見つめてくる。
「なにが」
意識していると認めるのは癪なので、再びパフェを片付けるのに専念する。
この頃には何故か顔から火が出るほど恥ずかしかったが、無理矢理にごまかした。
いや、思い込もうとした。
動揺していることを、眼前にいるこの男にだけは知られたくない。
だが、現実は無情なものだ。