召喚女子高生・ユヅキ
「ただ……苑依姫の方から、君にも是非きてほしいとおっしゃって、その真意をはかりかねてる」
「わ、私? なんで?」
驚いて振り返るも、東雲は脇息に寄りかかったまま動かない。
ちょっとは掃除しろと半眼で睨むも、眠たげな表情で淡々と先を続けるだけだ。
「【彷徨者】……というより、君に興味を持ってたんだろうな。救出された時、姿がないと知った姫はとてもがっかりされていたから」
その言葉に、柚月の瞳が輝く。
苑依姫。
その名前だけで、十二単を纏った美姫を想像してしまう。
こちらの世界に呼び出されても、顔を合わせるのはむさ苦しい破落戸(ゴロツキ)どもばかりだ。
姫の救出劇は、東雲とは違う役職の人間が担当したらしく、柚月は姫と一度も会わずじまいだった。
今の立場も状況も忘れ、うずうずと好奇心だけが刺激させる。
漆黒の長い髪に、色鮮やかな衣。
美しい細工の調度品に囲まれ、他人には御簾や扇で顔を隠すおしとやかさ。
雅な世界に生きる深窓の姫君。
ひと目でいいから見てみたい。