召喚女子高生・ユヅキ
「……うん。ちょっとね」
なるべく当たり障りのない返事をしたつもりだったが、柾人は目を見開いた。
「ちょっと!?」
身内の贔屓目としても、兄はいい男だと思う。
整った顔立ちに、健康そうな小麦色の肌。
アメフト部で鍛えられた体躯は、がっしりとした筋肉に覆われている。
成績も悪くなく、人当たりもいい。
頼まれると断れない。
というより、頼りがいがとてもあるため、老若男女の誰からも好かれている。
その証拠に柾人の妹というだけで、彼の同級生(特に女子)に可愛がられたものだ。
東雲も、協力をあおぐなら兄のような人間を選べばよかったのに。
つくづく十人並みの自分とは違う。
母親の胎内にいる時に、兄は二物どころか三物も四物も与えられたのだろうと柚月は分析している。
恨んではいないが、今の兄はその面影もなく顔色が悪い。
せっかくの美形が台無しである。
「まさか……柚……か、彼氏とかできたのか?」
「なんで、そうなるの」
兄の突飛な予想に眉をひそめれば、さらに表情が堅くなった。
切羽詰まった様子で肩を掴んでくる。