召喚女子高生・ユヅキ






 本来、寝殿造りでの玄関に当たる場所は中門(ちゅうもん)だが、それは邸の主か身分の高い客人に限られる。

 使用人が使う勝手口は侍廊と呼ばれ、牛車を置く車宿(くるまやどり)の先にある。

 東雲は権威にこだわる気がないのか単に面倒なのか、使用人と同じく侍廊から出入りしていた。



 宗真の案内で西側の廂を歩いていると中門廊の外に、数人の男たちが見える。

「支度できました?」

「へ、へい……」

 明らかに宗真より年上に見えるのに、態度はおどおどしていた。

「ん?」

 柚月が、ふと気付く。どこかで見た顔ぶれだった。

「……あ!」

 苑依姫を誘拐した盗賊たちだ。
 向こうも柚月の顔を見るなり、表情が一変する。

「あんたたち……ッ!」

「申し訳ねぇ!」

 柚月がとっさに構えると、盗賊たち全員が地面に手をついた。




< 56 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop