召喚女子高生・ユヅキ
「どうした、その頭。今が春だからって頭に花咲かしたのか」
「宗真がしてくれたの!
また言ったら、ぶっ飛ばすわよッ!」
拳を握って、抗議する。
やっぱり、似合わないか。
せっかく宗真が結ってくれたのに、飾られるのが自分では花も不憫かもしれない。
だが、ここで引き下がる柚月ではなかった。
幸いにも、反撃へ転じる口実はあった。
最大限、利用させてもらおう。
「そっちこそ、なによ。いつもよりカッコつけちゃって」
柚月の言葉に、珍しく東雲は形のいい眉をひそめた。
自分でも不本意な服装らしい。
おお、これは脈ありかも。
水晶の数珠こそ普段と同じだが、烏帽子に直衣姿である。
いつも鳥の巣状態だった黒髪にも櫛を入れたらしく、見事なストレート。
「向こうは大貴族だ。いつもの格好じゃ、門前払いになる」
おそらく本人は長くのびた前髪を払っただけだろうが、それすら憂いを感じる優雅な仕草に見える。
美形とは、心底お得だなと柚月は思う。