召喚女子高生・ユヅキ




 翳りのある貴公子と認めるのは癪なので、盛大に憎まれ口を叩いてやる。

「どうだか。美人なお姫様に逢いに行くから、気合い入ってるんでしょ」

「何を言ってるんだ。君は」

「別に。ただ、漣がスケベだって話」

 つんと澄ましてみせた。
 これだけしても罰は当たらないはず。

 あれ?
 私、何でこんなにムキになってんの?

 言いたいことは言ったので、苛立った理由を忘れてしまう柚月。
 その頃合いを見計らったように宗真の苦笑が割って入る。



「お師匠さま。今日は、彼らをお連れください」

「ああ」

 宗真が太刀を差し出すと、


 ガシャンッ!

 受け取ろうとした東雲の手から滑り落ちた。

 装飾が施された太刀である。傷がついてないか柚月も内心でヒヤヒヤした。

 東雲の毒が飛散するかと一瞬だけ身構える。


 しかし、当人の言動は柚月の予想に反していた。



「す、すみません……」

「いい」

 真っ赤になって謝罪する弟子を制して、東雲は自分で拾い上げた。
 流れるような動きで太刀を佩くと、短い挨拶をすませる。




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