召喚女子高生・ユヅキ




 従者が動揺した隙に少し手首を捻るだけで、チョコレートを折るように簡単に砕ける。



(ふたり)



 最後のひとりまで、素早く駆け寄る。
 戸惑う彼の手元を瞬時に蹴り上げた。

 柄の根元から刀身が折れ、地面に突き刺さる。



(三人!)


 靴底を滑らせ、男の眼前へ辿り着く。

 一見、無鉄砲にも思える柚月の大立ち回りには意味があった。


 従者の注意を逸らすこと。
 彼らの武器を破壊すること。

 主人である男を人質として有効に使い、その二点を達成したのだ。


 東雲が召喚という魔法じみた【術】を使えるように、柚月のような異世界の住人は身体能力が強化されるらしい。

 問題は、彼らに当てないように注意しなければならないこと。

 手加減しているとはいえ、一歩間違えば人殺しになってしまう。


 どんなことがあっても、人は殺さない。


 それが、東雲と初めて逢った時に交わした約束だった。

 けれど、半殺しにしてはいけないとは言われていない。

 毎回、柚月は自分に都合のいい解釈をして暴れまくっている。




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