召喚女子高生・ユヅキ




「さぁて、お互いに落とし前つけましょうか」

 柚月は、再び男の胸ぐらを掴む。

 今度こそ邪魔する者は誰もいない。

「ま、待ってくれ!
 許してくれ! 私が悪かったッ!!」


「待ったなしッ!
 ごめんですんだら、それこそ私はいらないのよッ!」


 どっちが悪人だか、わかったものではない。

 青ざめた男に拳を叩き込もうとした瞬間、



「────そこまでだ」



 耳元で抑揚のない声が響く。

 ふと、握った拳の力が失われる。
 男の顔面に触れる寸前で、腕に何者かの手に掴まれていた。



「おいたが過ぎるぞ、山猫娘」

「れ、漣ッ!?」

 柚月は、ぎょっとした。
 ヤツの声が、何故か頭上すぐから聞こえてくる。

 見れば、東雲が後ろから抱きつくように、ぴったりと身体を寄せている。

 一気に心臓が飛び跳ねた。


「は、離してよ、漣!」

「いやだ。こうしないとまた暴れるくせに」

 子供みたいな言い訳にも反論できない。
 ますます強く抱き込まれ、混乱が深まる。

 殴られないための措置なのだろうが、これは反則だ。

 頬が熱い。
 どくどくと心臓が脈打つ。




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