桃の姫〜最強姫の愛した族〜
「玲也」


「…姉さん」


「どうしたの?」


そう尋ねても、玲也はこっちを見ない。


ただ1つ、笑顔で見つめ合うユウと麗を見つめている。


ああ、そういうことか。


「玲也、麗を助けられなくてショック?」


いつもソバにいて、麗を守ってきた玲也。


だけど守るどころか、助けることすら出来なかった。


その上、麗はユウにずっと引っ付いたまま。


玲也はきっと悲しくて…。


それと同じくらい寂しいんだよね。


「ショックというか、悔しい」


「悔しい?」


聞き返すと、こくんと頷く。


ふむ、悔しいか。


でもなんで悔しいんだろう。


「戦っている最中、麗のソバにいたのにあいつの気配に気づけなくて…」


「それは仕方ないことだよ。私だって修平の気配には気づけなかったし」


あれは私のミスだ。


いないことには気づいていたのに、居場所を見つけることが出来なかった。


私が気づけなかったことを、玲也が気づけないのは仕方ない。



< 217 / 230 >

この作品をシェア

pagetop