桃の姫〜最強姫の愛した族〜
「轟の副総長が龍哉を殺すのを防ぐため」


「「っ?!」」


「龍哉を殺すってなんでなんや?!龍哉が何をしたって言うんや!」


「光汰!落ち着け!まだ…話の途中だ」


「っ…」


光汰が暴れるのもわかる。


もし私が光汰だったとしても、同じことをしたと思う。


それくらい相手が大切なんだ。


「龍哉のお父さんがね、轟の副総長のお母さんを逮捕したからよ」


「それだけのために…っ?」


「向こうからしたら〝それだけのため〟じゃないだろうね。逮捕されることによって、幸せだった生活は一変するんだから」


「…家族、だから…」


きゅっと服の裾を掴んでくる志乃は、多分この中で一番理解している。


家族がバラバラになってしまう辛さを。


「お母さんが捕まってしまい、お父さんは狂いに狂い、しまいには暴力…。幸せだったあの頃を奪った白鳥から、今度は自分が奪ってやろうと考えた」


奪われて奪って。


そんなことをしても誰も喜ばない。


幸せだった頃は戻ってくることはないのだから。


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