EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
「……なぜお前が月那を抱きしめているんだ」
「いや誤解だから!月那が抱き着きたいのは本当はアニキなんだよな!な!?」
焦って言い訳を述べる弟と、俯いてモジモジしている月那を交互に見てから氷河は深い溜息を吐いた。
「俺は千夜になりたい」
「はあ!?なに言っちゃってるんだ!?とうとう月那に精神破壊されたかアニキ!!」
「黙れ」
クルリと二人に背を向けて廊下を歩き出す。
そんな兄の背中を千夜は追いかけた。
「待てよ!なあ!アニキ」
月那をキッチンに戻してから全速力で廊下を走り、兄の肩を掴む。
「なんだ」
「月那になつかれたいんだろ?ならあれだよ。押してダメなら引いてみなってやつ!」
「は?」
「アニキは押しまくりだからさ。たまには素っ気なくして月那を寂しがらせんの!そうすりゃ月那の方から甘えてくるって」
「千夜お前っ……月那を寂しがらせてどうする…!!」
「寂しいから擦り寄ってくるんだよ!なんで勉強はできんのにこんな簡単なことがわかんねぇかな~」
そんなふうに言われたら氷河はこう返すしかない。
「ほう…ならやってやろうじゃないか。その“押してダメなら引いてみな”作戦をな」
かくして、作戦は実行に移された。