EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
それから数日、月那はあからさまに氷河から無視をされてズーンと落ち込んでいた。
「ふえ…ひょうがさま…」
一佳と桃のことは変わらず呼んでくれるのに、自分の名前だけ呼ばれなくなった。
廊下でバッタリ出会っても目をそらされ素通り。
さっきも、人間用のキッチンに遊びに来てくれた氷河は月那のことを無視して早苗と楽しそうにお喋りを始めてしまう始末。
(わたし…きらわれちゃったのかな…?)
現在、一佳と桃、駿も一緒になってかくれんぼをしている真っ最中なのだが、月那は隠れる場所を探しもせずに廊下をトボトボ歩いていた。
魔冬家の屋敷は氷河と千夜の部屋のみ洋式で、他の部屋や廊下は和式だ。
障子の横を通り過ぎ、屋敷の廊下を道なりに進む。
すると突然、左手側の襖(ふすま)が開かれた。
「おや。こんな奥まで迷い込んできたのか」
「あ…」
見上げて目が合ったその人物は、若作りな白髪の男性。
白い着物を身にまとった氷河の祖父、魔冬雪風(ゆきかぜ)だった。
「お前の名は確か……月那、だったか」
「は…はい」
雪風は月那の目線になるようにしゃがみ込んだ。
「遊んでいたのか?」
「かくれんぼ、してて…」
「そうか。かくれんぼか。お前が鬼なのか?」
首をブンブン横に振ったら、雪風は上品に笑った。
「なら私の部屋に隠れるといい。おいで」