EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ

おいでと言われてついて行った結果、月那は魔冬家の大ボスの部屋に上がり込むこととなった。

雪風の部屋は落ち着いた和室で、部屋の真ん中にはドッシリとした机が置いてある。

と、月那はその机の上に乗っている絵に注目した。

「これは…なんですか?」

黒一色で描かれたそれを興味深げに見つめる。

「これか?これは水墨画と言ってな。墨で書いた絵だ。私の趣味でね。ほら、こちらにもあるぞ」

雪風が他の絵も見せてくれる。

が、月那にはこれらの絵が何を描いているのか全くわからなかった。

「ああ…そうか。お前は地上に行ったことがないのか…」

察した雪風が一つずつ説明していく。

「これは山だ」

「ヤマ?」

「季節によって色彩を変える、美しい自然だよ」

過去に見た風景を懐かしみ、雪風は穏やかに微笑んだ。

「深い緑だったり、紅葉で赤や黄色に染まったり…。ああ、こっちは滝だ」

「タキ…」

「滝は水さ。高い所から勢いよく流れ落ちる、水の竜」

「タキはウミとにてますか?」

「海?いや、海とはまた違うな。月那、海は知っているのか?」

「はい!まえにひょうがさまの本でみました」


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