EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
笑顔で報告する月那を見て雪風がクスリと笑う。
「そうか。あいつは地上に憧れているからな。私が色々と地上の話をしてやったからだろうか」
「ゆきかぜさまは、地上にいったことがあるんですか?」
この何気ない質問に雪風は悲しげな表情をした。
「ああ…。私は黄泉帰り(よみがえり)だからな」
「よみ、がえり…?」
「私の心臓は止まっている、ということだよ」
まだよく理解できていない月那を抱き寄せ、頭を撫でる。
「お前は知らなくていい。知らないでいておくれ」
心からの願いをそっと呟いた時だった。
部屋の襖がカラリと開かれた。
「失礼致します。おじい様、月那を知りまっ……月那!!」
突然の来訪者は月那のことを無視し続けた冷酷男、氷河だった。
また無視されるのではないかと怯えながら、雪風の膝上で月那は縮こまる。
すると、意外なことに氷河は月那を真っ直ぐ見つめて目を見開いた。
「なぜ…なぜ月那がおじい様の膝の上に…!?」
「ん?かくれんぼをしているということでな。私の部屋を隠れ場所として提供していたのだよ」
「だからって…何も膝に乗せなくったって…」
「なんだ?月那はお前のお気に入りだったのか?最愛の恋人を寝取られて嫉妬する男の顔をしているぞ」