EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
3
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あれ以来、氷河はよく料理をするようになった。
初めて作った完璧すぎるホットケーキを美味しそうに完食した月那の笑顔にツボったらしい。
月那が十一歳になる頃には料理のレパートリーをかなり増やしていた。
「月那、今日はグラタンだぞ」
「わあ!氷河さまのグラタン大好きです!」
「ふっ、知っている」
黒の着物に白のエプロン姿。
これが魔冬氷河十六歳の今の格好だ。
料理を終えた彼はエプロンを脱ぎ、月那の隣に腰掛けた。
「いただきます」
丁寧に手を合わせてからフォークを持つ月那をジッと見つめる。
頬を緩ませてモグモグと食べる月那は、小さい頃と変わらない。
「どうだ?」
「おいしいです!」
「そうか。ハハッ、作りがいがあるな」
愉快そうに氷河が笑った時だった。
「あ!氷河さま!また月那にだけズル~イ!」
一佳と桃、それに駿がやって来た。
一佳が頬を膨らませながら文句を言う。
すると氷河は困ったように苦笑した。
「ああ…すまない。だが一佳、お前はグラタンが嫌いではなかったか?前に自分で言っていただろう」
「うう……そ、そうですけど…」
口ごもる一佳に対し、後からやって来た早苗が年長者らしくやんわりと言った。
「ほらほら氷河さまを困らせないの。あなた達には私が作った愛情タップリの特製ハンバーグがあるからね」
「わーい!ハンバーグ!」
桃が手を挙げて喜ぶ。
しかしその隣で、一佳は納得のいかない表情で唇を噛んだのだった。