EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ


†††


 あれ以来、氷河はよく料理をするようになった。

初めて作った完璧すぎるホットケーキを美味しそうに完食した月那の笑顔にツボったらしい。

月那が十一歳になる頃には料理のレパートリーをかなり増やしていた。


「月那、今日はグラタンだぞ」

「わあ!氷河さまのグラタン大好きです!」

「ふっ、知っている」

黒の着物に白のエプロン姿。

これが魔冬氷河十六歳の今の格好だ。

料理を終えた彼はエプロンを脱ぎ、月那の隣に腰掛けた。


「いただきます」


丁寧に手を合わせてからフォークを持つ月那をジッと見つめる。

頬を緩ませてモグモグと食べる月那は、小さい頃と変わらない。

「どうだ?」

「おいしいです!」

「そうか。ハハッ、作りがいがあるな」

愉快そうに氷河が笑った時だった。


「あ!氷河さま!また月那にだけズル~イ!」

一佳と桃、それに駿がやって来た。

一佳が頬を膨らませながら文句を言う。

すると氷河は困ったように苦笑した。

「ああ…すまない。だが一佳、お前はグラタンが嫌いではなかったか?前に自分で言っていただろう」

「うう……そ、そうですけど…」


口ごもる一佳に対し、後からやって来た早苗が年長者らしくやんわりと言った。

「ほらほら氷河さまを困らせないの。あなた達には私が作った愛情タップリの特製ハンバーグがあるからね」

「わーい!ハンバーグ!」

桃が手を挙げて喜ぶ。

しかしその隣で、一佳は納得のいかない表情で唇を噛んだのだった。





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