EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
「待て」
パシャンと湯が跳ねる音がした。
後ろを向いている月那には詳しくはわからなかったが、どうやら氷河が湯船から上がったようだ。
待てと言われて固まっていると、ゆっくりと近づいてくる気配を背中に感じた。
「これは……どうしたんだ」
背後から月那の腰をそっと触る。
そこには蹴られてついた大きなアザがあった。
「ここも…ここにも…」
肩、腹、腕。
変色した醜いアザに優しく触れながら苦しげに瞳を揺らす氷河。
「どうしたんだ……言ってみろ」
後ろから甘い声で囁き、愛しい存在を抱きしめる。
互いの肌と肌が直接触れ合って恥ずかしいはずなのに、月那は知られてしまったショックでそれどころではなかった。
溢れそうになる涙を必死に堪える。
「月那…」
チュッ――と腕のアザに口づけられた。
まるで浄化するような行為に、月那の身体が熱くなる。
「か、階段で…転んで…」
「どこの階段だ」
「氷河さまの、お部屋に通じる…」
「そうだな。そこ以外うちには階段がない。だからな、月那。階段で転んだら俺が気づくはずなんだが?」